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“排除の論理”が国民を怒らせた理由

2017年11月

私は井沢元彦さんの「逆説の日本史」の愛読者です。週刊ポストに毎週連載されていて、もう25年以上も続いているようですが、私が読むのは本になってからです。ほぼ1年に1回出版される単行本を、私は20年以上にわたり読んでいます。とは言っても私は朝の通勤電車の中でしか本を読まないので、読めても1日に17分程度です。それでも若い頃は読むのもそれなりに早かったし、当時は通勤時間が今より長かったこともあり、1ヶ月ほどで1冊を読み終えていました。それが今は眼も悪くなって本を読むのが大変遅くなってしまい、1冊読むのに大体1年もかかります。こうなると、私が読み終えるのと新刊が出版されるのとが追いかけっこになってしまって他の本を読む余裕がなく、この10年というもの、本と言えば「逆説の日本史」しか読んでいないという情けない状態になっています。私の頭はかなりの井沢教徒だということです。

 井沢教というのはすなわちは日本教の解釈論です。日本人というのはキリスト教徒やイスラム教徒などと違って自分が宗教的な信念の影響を受けているという自覚がなく、あたかも自らが常に合理性に基づいた言動をとっていると思いがちですが、実は違うのです。弥生人が日本にやってきて縄文人とその文化を浸食していったときから、次の3つが日本人の宗教的教義として確立していきます。

1-穢れの忌避
2-言霊思想
3-怨霊信仰

簡単に説明しますと、まず1-日本人は穢れを嫌がる。穢れとは何か。それは「死」です。つまり日本人は死が汚いものだと思っており、死に触れることを恐れる。また、2-日本人は言葉に出したしたことは現実化すると思っている。さらに、3-日本人は恨みや悲しみを抱いてこの世を去ったものは怨霊と化し、この世に禍をもたらすと思っている。この信仰からいくつかの行動規範が生まれますが、そのうちの3-怨霊信仰に関わるものが「和」の行動規範です。なるべく恨みや悲しみを発生させてはいけない。だから何事も全員で話し合い、全会一致で決める必要がある。自らの意見が拒絶され、悲しみや恨みを抱くものが出ればそれが大怨霊の発生につながりかねない。これが、井沢さんによる日本教の解釈です。

 この話を、まったく相手にしない人もいます。でもそういう人に限って、葬式帰りらしき喪服の人が喫茶店で隣に座ったのがけしからんなどと、店のマスターに大苦情を言ったりします。そうした人は、葬式帰りの人が街をウロウロするべきではないというのが当然だと思っているわけですが、「なぜ?」と聞かれると説明できずに余計に怒り出したりします。合理的な自分が、「死穢」に触れてきた人が汚れているなどということを信じているとは露ほども思っていないからです。

さて、先日衆議院選挙がありました。結果はもうみなさんご存じの通り、与党の大勝利です。選挙戦当初の下馬評は、小池百合子さん率いる希望の党が相当の善戦をするのではないかというものでした。メディアは安倍首相の解散権行使には実は憲法上の明確な根拠はないとか、「大義なき解散」だとか盛んに与党を批判し、希望の党に期待する論調を張っていました。その論調が、ある時点をきっかけとして180度変わります。それが小池さんによる「排除します。」発言、すなわち“排除の論理”の表出からでした。この経緯についてもみなさんはよくご存じのことでしょうが、一体この現象はなんだったのか。まるで自然なのことのように世の中で扱われていますが、つくづくおかしな話です。一つの政党でやっていくのだから、ただ目先の選挙の数合わせだけを目的として、根本的なところで考え方の違う人の入党を許可してはいけない。どうしても入れろとゴネるのならそれは排除しなければいけない。これこそが正論です。
小池さんは改憲派です。今の憲法9条の規定のもとで軍隊を保有できると解釈することには相当な無理があるわけですが、軍隊なしでは攻撃されたときに守るべき術がないとかいう合理的な考え方をする人たちと、いや、憲法9条で「平和主義」ということを高々と歌い上げることでこそ平和は実現すると考える「言霊イスト」が、同じ党に共存できるわけがありません。だから“排除の論理”は正しいのです。

 しかし実際はこのときからメディアは、 「小池さんが排除と言った。」とそれまでの解散批判などまるでなかったかのように連日大騒ぎし、あたかも小池さんがとんでもない黒魔術でも使う魔女であるかのように取り扱い出しました。その理由…もう私には一つしか思い浮かびません。“怨霊信仰”です。小池さんに「排除」された結果、落選する人間が多数出ることになる。政治家にとって落選は死を意味します。悔しさと恨みと悲しみを抱えながら、政治家としての生命を断たれていくものが多数出る。この人たちは必ず怨霊化します。そしてその怨念は必ずやこの世の中に大きな禍をもたらすことになる。だからその大元にいる“排除の論理”なるものを唱えている大量殺戮者の大魔女を、今のうちに抹殺しなければならない。そういう信仰が今回の現象の背景にはある。敬虔な井沢教徒である私にはそうとしか思えないのです。

つくづく、いつまでもこれで日本は大丈夫なのかなと思います。けれども今回、希望の党に投票した人は投票者の19%ほどいたようで、その人達は少なくとも“排除の論理”に怨霊発生の恐怖を感じなかったか、感じたとしてもそれを自分の中で消化し、合理性で恐怖をコントロールした人ということになります。まあ、それだけいればとりあえず大丈夫、と発言することで、後は言霊効果に任せたい今日この頃であります。

 

代表取締役 奥野 政樹
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