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邪悪の3要件

2016年11月

NHK BSプレミアムに「英雄たちの選択」という歴史番組があります。内容は「英雄たちの『脳内』に深く分け入り、選択の崖っぷちに立たされた英雄たちが体験したであろうかっとうを、専門家の考証に基づいて厳密に復元。複数の選択肢を、独自アニメーションなどを駆使してシミュレーションします。」と番組ホームページにあります。この専門家の一人として、脳科学者の中野信子さんがよく出演されています。中野先生の崖っぷちにおける選択は総じて攻撃的かつ過激で、他の各分野の男性専門家達が保守的な選択をしがちであることと好対照をなすところが面白い。また、中野先生の専門的見地からの心理分析は非常に説得力があり、私はいつも楽しみにしています。まあ、一言で言えば中野ファンです。

 その中野先生が、豊臣秀吉の本能寺の変に際しての中国大返しについてこんなことを言っていました。「秀吉ファンはこんなこと言われたら嫌かもしれないけど、秀吉がこの奇蹟を成し遂げたのは、彼が邪悪の3要件を備えていたからです。」その邪悪の3要件とは以下の3つを言うようです。

 ・ナルシスト   = 異常に自己愛が強い人
 ・マキャベリスト = 目的の達成のためにはまったく手段を選ばない人
 ・サイコパス   = 異常に反社会的であり良心や善意を持たない人

少々意外なのは、この悪の3要件を兼ね備えている人はいわゆる「成功」をすることが多く、また更に意外なのはその理由が、こういう人物は魅力的で人がついてくるからなのだそうです。中野先生は、中国大返しにおいて「信長は生きている」という噂を流布したことをもって、秀吉の手段を選ばないマキャベリストぶりを強調していました。しかし、今回に限って言えば中野先生にしては分析が雑で、あまり納得感がありません。この時代は戦国時代であり、情報戦の一環として嘘を流布するなどというのはいたって日常茶飯事、極めて普通の戦術です。謀略の天才毛利元就などはわざわざ敵の領地に偽の手紙を落としてくるようなこともしており、それに比べれば秀吉というのはむしろ、敵陣に単身乗り込んで話をつけるというような正面突破、あるいは水責めのような大がかりで見えやすい戦術を選びがち。マキャベリストとはかなり違うのではないかと思います。

 またナルシストにしても、秀吉の努力はその出自の低さと多指症という身体的ハンディキャップからくるコンプレックスが源泉になっているように思われるし、サイコパスにしても、比叡山焼き討ちの際に信長の皆殺し命令にこっそり違反して女子供を逃がすなど、かえって良心と善意を物語る逸話が目立ちます。

 やはり秀吉の「成功」を支えたのは、この自己中心的な邪悪の3要件から離れたところにある他者との連動を模索する特質、つまり現場を知り現場を作る人の心の動きに敏感に反応し、モチベーションを創出する人心掌握にこそあるのではないかと私は思います。中国大返しについても、信長が生きているという嘘を流したことより、重い装備を持って走る下級兵士たちのために、姫路城の米蔵をすっからかんにして握り飯をたらふくふるまったというようなところに注目したいのです。

とは言うものの、この邪悪の3要件を兼ね備えた人間が魅力的であるというのもわからないではありません。それは、この3要件をまったく持たずすべてその対極にある性質を持つ人間について考えてみればわかります。

 ・自分が嫌いで常に自信がない
 ・達成すべき目的があるのに、手段に対する自分または周囲の納得感にこだわる
 ・常に良心と善意に満ち溢れており、社会常識を体現している

 この3つをすべて兼ね備えている人間が魅力的かどうか。少なくとも私は、正直このようなリーダーのもとでは働きたくありません。何も達成できないことが分かりきっているからです。

 この邪悪の3要件というのは確かに人間的な魅力を増し、人を惹きつけ、いわゆる「成功」するためには相当程度必要なことではあるのでしょう。この要素が強い人というのは、近くにいられるととても困るが遠くから見ている分には実に刺激的で面白いという側面もあり、多くの人間の心を掌握しなければならない政治家や芸能人などにとっては、より必要な要素だとも言えるのではないかと思います。もっとも、邪悪の3つの各要件にはすべて異常性が加味されているため、異常にナルシストでマキャベリストかつサイコパスな人間となると、やはり「成功」というよりは破滅する確率の方がはるかに高いのではないかとも思いますが。

さて、こう考えてくると結局、今回の「英雄たちの選択」における中野信子コメントから得られた教訓は何なのでしょうか?私のような常人にとってそれは、「善人ぶるな。時には邪悪になろうと努力せよ。」そういうことではないかと感じられるのです。私のような常人にとっては、そんなに容易いことではないのですが。

代表取締役CEO  奥野 政樹
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