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CEOニュースレター

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組織のキーマンは放火魔と消防士

2015年07月

先日、自称世界規模のコンサルティング・ファームから私をご指名の電話がかかってきました。いかにも営業的で喋り慣れた女性の声です。
 「御社は、データセンターまわりのネットワークやシステム構築サービスを提供されてますでしょうか?」
 「はい、しています。」
 「あーよかった。」
イラっとくる私。本当に当社のサービスに興味を持ち、利用を検討するために情報が欲しいのであれば、「あー、よかった」などという子供のお使いのような言葉は絶対に発しないのです。これは、当社のサービスに興味があることを装い、こちらの気を惹きつけておいて、頃よいところで自社サービスを売り込もうというマニュアル・トークであることは火を見るより明らか。私はこういう姑息な手段が大嫌いです。


その後も女性は、「御社は、XXXやYYYといった日本を代表する一流企業にもサービスを提供できますか?」「あー、よかった。」みたいなセリフを繰り返すので、「実はそうした大企業が御社の提供されているようなサービスの導入を考えていまして…」というセリフを遮り、「(能書きはもういいよ。)いくら?」と聞いてあげました。「えっ」と女性。「だから、そういう企業集めてビジネス・マッチングの会をやるんでしょう?参加費はいくらですか?」女性は多少ひるんだ様子でしたが、それでも体勢を立て直し「はい、都心一流ホテル1泊付きで、一流企業のCEO、CIOクラスの決裁権者12名との商談保証。これで、260万円と言う大変魅力的な価格設定となっています。」このマニュアル・トークに私のイライラ度はどんどんと上がっていきます。少々懲らしめたくなってきてしまいました。


「高いね。そのホテル、私も泊まったことあるけど一泊5万でしたよ。260万円はちょっと。」これでようやく女性は夢中のマニュアル・トークから我に返ったようで、「いや、ですから、宿泊だけではなく一流企業のCEOやCIOと…」と、少し人間らしい感情の入った声で切り返してきました。「まあ、キーマンと会えるなら、255万円の商談料金もあり得るかもしれないけど、その面子じゃあね。御社もプロなんだから、またそういうキーマンと会える会でも企画したら、声かけてください。今日はどうも。」と切ろうとしたら、「ちょっと待って!」とのこと。「いつもどういうクラスの方たちと商談されているんですか?トップ・ダウンじゃなく、ボトム・アップということですか?」と来ました。「ベル・ボトムだかコロムビア・トップだか知らないけど、組織の意思決定って、地位とか決裁権とかどうでもいいんだよね。」と私。女性はまだ電話を切ってくれません。仕方がないので、なぜか世界一流を語るコンサルファームに無料で逆コンサルすることになってしまいました。


 

「組織において、物事というのは以下の2つのタイプのキーマンによる本能的連携の中で成されるものです。役職の高い低いにかかわらず、この2つのタイプがかみ合わなければ事は成りません。稟議とか会議とか、これらはあくまでも手続き行為であり、事が成る原理とは本質的に無関係の、一種のバランス維持装置みたいなものです。

<キーマン1 放火魔>
とにかく目立つのが好きで、自分こそが革新的、自分以外はみんな守旧的だと思っている。自分だけが仕事をしていると公言してはばからない。すぐ調子に乗る。思い込みが激しい。人情に篤い。おせっかい。理屈は唱えるが、まったく合理性はない。
 
 まずこういう人が、突然取り憑かれたようによくわからない問題意識を持ち、後先考えず、俺がやらなければ世の中は変わらない等という、どこにも合理性のない思い込みと自己陶酔で、組織内ルールも根回しも無視して動き始めます。そのスピードはかなり速く、周りが気付いた時には、すでに言ってはいけないことを言いまくり、コミット してはいけないことを社内外にコミットしてしまっています。こうして、放火が終わると組織内指名手配となってしまうのですが、そうすると、次のキーマンである消防士に問題をすべて丸投げして逃亡、次の火付けにもう向かっているのです。

<キーマン2 消防士>
勝負師。人ができない難しい仕事や嫌がる仕事を、軽くこなすことに美学を持っている。そういう仕事を自分に用意してくれる放火魔が実は大好き。大事なのは美学であり、人の評価をあまり気にしない。時に、業務成就のためには人情は切り捨てる。人間の行動原理に敏感で、複雑に絡む利害関係を微妙なところで切り裂きながら、人心を一方向に誘導していく。理屈に強い。しかし論理には溺れない。特徴として、マニュアルに書いてあるようなことをしたり顔で語る相手には、まったく隠すことなく不快感をあらわにし、時に徹底的にやっつける。流行や常識に興味がないし、それを押し付けられると怒り出す。
 
 消防士は、放火魔から丸投げされた案件に隙のない理論武装を施していく一方、巧みに人心を操って周囲を一つの方向性に誘導していき、放火魔の付けた火が無秩序に全方位へ拡大することを食い止め、その火を一方向にのみ向いた聖なる火へと転化することで、事は成就することとなります。


「こんな話を電話口の女性にして、「ということなので、放火魔と消防士のデータベースができたらまた連絡ください。」と伝えました。最後に「そう言えば、あなたがおっしゃるベル・ボトムとコロムビア・トップだけど、あれは、アメリカなんかでは放火魔と消防士が挑戦者として評価されて偉くなる傾向があるのに対し、日本では和を乱す変人として扱われるので、あまり組織の上には行きにくいということの結果なのかもしれませんね。」とだけ申し添えておきました。彼女は、さすがにもうそれ以上質問もないようで無言になり、こちらも静かに受話器を置いたのでした。

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代表執行役CEO  奥野 政樹

 

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