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教育論-後編(技術部:間庭)

2017年01月20日

教育論後編では、社内研修で実践している内容をご紹介しよう。

現物主義
仏教の空(くう)の思想では、目の前に存在するルータやスイッチやサーバも空なもので、あってもないようなものらしい。しかし、悟りの境地に至っていない煩悩まみれの我々にとっては、実際に見て手に触れて体験することは重要だ。知識は経験にはならないが、経験はそのまま知識だ。

インターナップのNetwork Operation Center(NOC)メンバーは、監視部隊なので定期的にデータセンターに行く機会がない。国内4か所のデータセンターを一か所で監視しているため、いずれのデータセンターからも地理的に離れた監視センターに詰めているのだ。そしてサーバ、ルータ等ラックマウントからケーブリングまでの物理的な作業は、別のチームが担当している。

そこで監視部隊といえども、インターナップでは毎月データセンターを訪問し、新規顧客のラックや、直近のリモートハンズの作業内容を共有している。これは、新人・経験者の別なく実施する。これにより監視業務がメインのスタッフでも、彼らの頭の中に展開された論理構成図と、物理的な世界がリンクできるという訳だ。

データセンターという建物一つとってみても、それを本当の意味で理解することは重要である。定期的にデータセンターを訪れることで、データセンターの存在理由を身体で覚えてもらう。「データセンターは顧客の重要なデータを預かる場所なので、セキュリティが厳しい」では理解したことにならないのだ。データセンターの、自社ラックに到達するまでの認証の連続、長い道のり。生体認証がなかなか通らず、後ろに人の列ができるあの焦燥感。常に冷気に吹き付けられ凍てつける感覚…。これらを皮膚感覚で覚えると、作業依頼が来た時に真っ先にステージングルーム(作業や会議用の小部屋のこと)を予約せよ!空きがなかったら、せめて作業机と椅子はキープせよ!冷たい地べたに8時間も座って作業したら、痔を発症する危険がある! と初動を取ることができるようになる。

新人の中にはデータセンターに入るのが初めての者もおり、いつぞやある女性社員などは、なんとスカート姿でデータセンターに臨んだ。そして、コールド・アイルに足を踏み入れるや否や、床下から吹き上げる冷気でスカートがめくれ上がった。私は思わず歓喜の声を上げた。

教育論-全編で失敗することの重要さを説いたことを思い出して欲しい。私は敢えて忠告などしない。「データセンターは寒いからね、スカートなんかで来ないでよ」などと、親切に言ってあげない。失敗して、生命の危機を感じて、大いに体で覚えてもらうのだ。

不要な個所を切り捨てる
下記構成図を見て欲しい。

First

げえっ!気持ち悪い!ごちゃごちゃ詰め込んで、蟻が這っているようだ!
図はありがちなISPのバックボーンネットワークを、今私が即席にでっちあげたものであるので、詮索はご容赦願いたい。例えば自社ネットワークがこれで、この全体図を新人にばん、と見せても、脳の正常な機能により情報がシャットアウトされることは間違いない。
この図には、下記要素が混在している。

1. eBGP:ISPとの接続
2. eBGP:顧客との接続
3. iBGP
4. OSPF
5. RIP
6. 図では見えないが、static route
7. 上記プロトコル間の再配布
8. VLAN10とVLAN20による二重化

商用環境では更に多くの要素が存在することだろう。インターナップの場合、4つの上流プロバイダに対するインテリジェント・ルーティングによる経路選択が入ってくるので、更に混乱を極める。
講師はこれらの要素をそのまま使うのではなく、「何を教えるか」に応じて、かつ相手の知識レベルに応じて捨象しなくてはならぬ。要は余計なことは思い切って切り捨てよ、ということだ。

ISPとのBGP接続の場合。
Aマルチホームなら、
マルチ

再配布なら、
再配布

OSPFによる等コスト・ロードバランシングで系を二重化するなら。

OSPF

尚、何気に大事なのが、サンプルで使うIPアドレスだ。192.168.23.0/24や10.101.70.0/24のように、ハンパな数字を使っているヘタな参考書を見かける。コンテキストと無関係な所を複雑化することの、メリットはあるのか?読む者をして、肝心の教えるべきポイントに対する集中力を紛らわせるような浅慮な著者に対しては、殺意すら覚える。本当に23や70という数字が必要でない限り、例えばサンプルにネットワークセグメントが23個や70個存在するのでない限り、シンプルな数字を心がけるべきだ。

テキスト作り
研修を標準化(誰が教えても同じ結果がでるよう)するのに欠かせないのがテキストである。受講者の脳に染み入るようなストーリーを考える。脳に染み入るというのは、実務とリンクしている、ということだ。この研修によって、普段実務で行っているオペレーションを体系的に理解ができた、ということである。実務ではどうしても断片的なオペレーションにならざるを得ない。例えばnamedであればreloadは頻繁に実行するが、stopはできない。顧客の個々のゾーンレコードは修正するが、named.confは編集しない。これらをスクラッチから構築することで、受講者がアハ体験できるような、点と点がつながるような、そんなストーリーを作り上げるのだ。

重要なのは、絶対にストーリー通りに研修が進むこと。途中で変なエラーメッセージやウィンドウが出てきて、受講者の注意を紛らわさないこと。これを確実に保障するために、実務と変わらない位の検証が必要だ。絶対に、ストーリー以外のことに話がそれてはいけない。

断っておくが、講義中に新人を前にして、RAIDコントローラやNICのドライバが認識できない系のトラブルが発生するというのは、講師の怠慢以外の何物でもない。「トラブルシューティングも大事な勉強さ、よく見ていたまえ」などと得意顔で腕まくりし、大いに白ける新人を前に先輩一人だけ獅子のごとく奮い、サーバと格闘を始めるなどは馬鹿の極みである。トラブルシューティングはトラブルシューティングで、独立に研修コースを立てること。まず検証サーバを決めて、事前にインストールしてみて、問題なくインストールが完了するディストリビューションとバージョンを決めておくのだ。

例えば入門編で、LinuxをDELLサーバにクリーンインストールして、apache/bindを動かすところまでやる。こんな簡単なテキストでも、私はテキストを完成させるまでに10回以上インストールを繰り返した。apacheとbindだけインストール時にDVDからぶち込んでしまいたい。だが、これらはLAMPサーバにひとまとめにされているではないか。すると、インストール時にMySQLのパスワードを指定せよとダイアログが表示される。apache/bindの研修に、MySQLは要らない。受講者がMySQLを知っていればよいが、知らないと、それまでぴんと張っていた集中力の糸がふっと緩む。「とりあえず無視してね」で済む話なのだが、できればMySQL君には引っ込んでいてもらいたいのだ。

ここまでやって初めて受講者は、http://www.myname.com/index.htmlでトップページにアクセスするまでの道のりを習得する。httpd.conf、named.conf、ゾーンファイルを編集する。するとindex.htmlで自分で記述した数行のHTML言語が、端末のブラウザで整形されて表示される。apache2やnamedデーモンが停止していると、ページが表示できませんエラーが表示される。なるほどそうなのか。いつも業務で遭遇する事象や、実行している断片的なコマンドが、体系的に築き上げられる瞬間である。

これでもかの思考錯誤
教える側は、try and errorの連続である。時間をかければ何でもできる。新人教育といえども会社で仕事の一環である以上、最小限の工数で最大の効果を追求しなくてはならない。そうなると、全体的な研修カリキュラムから個々の研修内容まで、常に改善を続け最良な研修制度を模索しなくてはならない。試行錯誤の連続である。

配ったテキストに書き込みメモをさせたことは、大きな進歩であった。回収してみて分かったのだが、NOCメンバーは非日本語圏の方が多いので、意外なところで、つまり技術的な内容とは関連のない言語的なところで、少なからぬ労力をかけさせてしまっていたことが分かるのだ(テキストは日本語の勉強も兼ねて、日本語で書いている)。非ネイティブにも分かり易い日本語を心がけねばならぬ。

いつぞや、この作業は私が担当します、という意味で「アムロ行きます!」とメールしたところ、真面目にWhat does 「アムロ行きます」 mean?と聞き返された。そこで、英語でガンダムを説明せざるを得なくなってしまった。依頼する時に「~してちゃぶだい」や「~してちょんまげ」も同様である。ちょんまげはかろうじて外国人にも馴染みがあるが、ちゃぶ台を理解させるのは至難の業である。

ちょんまげは余談として、メインの技術的な要素以外にも、いろいろなところに見直しの余地は潜んでいる、ということだ。会社の時間を使う以上、あらゆる面で効率化し、一日も早く戦力に加えなくてはいけない。

最後に、言語を超える
こればかりは、AIにもマネすることのできぬ、人間の脳の驚くべき機能である。
まず、思考は全て言語である。人は一日に何万回も、対人でなくとも頭の中で、自分自身と会話している。「そろそろ昼だな」「やった、ラッキー」「そんなの無理だ、かんべんしてくれよ」などなど、無意識に語りかけているものだ。これらの有声無声の言葉によって、人は成り立っている。
そして人間は、言語を超えることができる。
というのも人間の脳は、潜在意識化でも働き続けているものなのだ。ある企画を考え考え詰めて、もう今日は無理だ、これ以上考えると鼻血が出る、次回におあずけしよう、と中断しても、なんのなんの、脳はそんな時こそ、無意識に考え続けているのである。そして帰宅して風呂に入っている時に、ふとグッド・アイデアがひらめく。これが言語を超える人間の脳の作用である。
ルータやスイッチの操作も、言葉で成り立っている。Ciscoコマンドなどは、正に言葉である。言語である。ルータやスイッチの検証を、何度も何度も繰り返す。GNSの仮想環境でも実機でもよい。何百何千回と繰り返す。本番作業も、何度も経験し修羅場をくぐり抜ける。何度も検証環境を作っては壊し、作っては壊ししているうちに、ある種の勘が働くようになる。嗅覚、といってもいい。手がコマンドを覚えました、なんてレベルでは全くない。このレベルに達すると、どうなるか。多数の機器が接続された、森のように鬱蒼と茂ったバックボーンネットワークの中のこの特定のルータでこのコマンドを打つと、間接的に、バックボーンのここに影響が出る!と、勘で、匂いで危険を感知するようになる。これはベンダーのマニュアルを見ても載っていない。参考書にも載っていない。正に言語を超えた、神がかりの能力なのだ。

講師の私はといえば、まだまだ限定的な神がかり状態である。コマンドよりも対顧客に対して、対人面に対してヘンな勘が働くようになってしまったが、どの分野でもよい、インターナップの全員が神がかって欲しいものだ。

 

 

 

 

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