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教育論-前編(技術部:間庭)

2016年12月20日

私はインターナップ・ジャパンのインターネットサービスの開通担当をして久しいが、実は、私にはもう一つ使命がある。社内教育である。若手への、技術の継承である。技術の継承ということは、将来のインターナップ・ジャパンの土台作りでもある。私はこの教育という行為を、単なる仕事の一環などとは捉えてはいない。「これも仕事なんで、えへへ」などと興ざめするような半端な心意気でやっているのでは、断じてないつもりだ。教育によって、この過剰なまでに行き過ぎた、世知辛い資本主義社会を、その場しのぎなんかでなくごまかさずに生き抜くための武器を次世代の若手に授けていると思っている。

書き出しから鼻息が荒くなってしまったが、今回のエンジニア・ブログではこの社内教育の秘訣を理念編、実践編の二回に分けて紹介しようと思う。

「君たちは自分自身のキャリアアップを考えろ。それと社会に貢献することの連立方程式をうまく立てるんだ。」(池上彰・佐藤優著 「新・リーダー論」での佐藤優さんの言葉)

私は社内教育に際し、まさにこれと同じことを若手に言っている。この、「自分のため」と「会社のため」という「連立方程式」というのが重要だ。自分自身のレベルアップを図りながら、それが同時に会社の利益にもつながっているような。自分のためをおろそかにすると、会社の要求するがままに忙しく10年の星霜を経たものの得たものがなかった…などという事態が起こる。逆に、自分のためだけにフォーカスするあまり、会社の進む方向とはあさっての方向へ突っ走ってもらっても、困る。会社の利益追求に貢献しつつ、かつそれが自分自身のレベルアップにもなっている。これが連立方程式を解く、ということだ。

一言に社員教育と言っても、非常に深い。教える側は、人間の本質に迫る勢いだ。以下、社員教育にあたり、肝に銘じておくべきことがらを説明しよう。

本質1 人間は知っていることしか認識できない

人間は、知っていることしか認識できない。知らないことは、脳が切り捨てる。なので、情報として認識されない。要は、言っても分からない。人間は、既に学習したことを土台にして、その上に新しいことを、それもちょっとずつ築く。勉強がつらいのはこのためだ。

赤ちゃんがいきなり走ることはできない。生まれ落ちていきなり院内を走り回られたら、たまったものではない。まずは、寝返り。いつの間にか、ひっくり返っている。これだけで親は大喜びである。次は、はいはい。うちの子は、はいはいの前にうつ伏せで両腕だけでずり寄るというランボー的な匍匐前進フェーズを経たが、ある日はいはいの合間にひょこんとお座りをする。そして、両足でしっかと立つ。そこから一歩、また一歩と足を前に出し、歩行を覚える。歩行をマスターしたら、走行に移行するのにさして時間はかからない。まさに、段階を経て成長するのだ。

なので、先日イギリスのお客様がIPv6でBGPセッションを有効化したが、これを新人に教えるとなると、なかなか難しい。これを理解するには、IPv6とBGPプロトコルの前提知識が要る。さらにIPv6には16進数を前提し、BGPはルーティングを前提する。ルーティングはIPアドレスとネットワークアドレスを前提し…という具合になかなか長い道のりである。

「show bgp ipv6 bgp summaryで、セッションがアップしているか見る。『State/PfxRcd』欄、つまり受け取っているPrefix数が現時点ではまだゼロだけど、先方の準備ができ次第広報してくるはずだ」などと得意顔で言っても、もしこれを聞く側がBGP初心者だったとしたら、彼の脳が不要な情報としてこれをNullに捨てるのは間違いない。こういう時は、本質だけ伝えて、枝葉の詳細は切り捨てる。今何を教えないか。後回しにするという判断も重要だ。まだ分からないことがある、という事実だけ認識してもらい、「今はこういうものだと覚えておいて」でよい。

本質2 わざと間違えさせる

私はよく、ネットワークオペレーションセンターのメンバーに宿題を出す。出題形式である。出題傾向は、お客様からの実問い合わせ(あるサイトにアクセスできなくなった、その時のtracerouteの結果はこう、原因は何が考えられるか、など)に関するものからインターナップの経路最適化技術にいたるまで、さまざまである。

なぜ問題形式かというと、問題にチャレンジして、大いに間違えてもらいたいからだ。この間違えることに、意義がある。

なぜ間違えると良いのか。人間は失敗したことを強く記憶する。これは、種の保存のために備わった本能である。失敗ということは、生命の危険ということである。想定と違った物事を、人は脳にその訂正事項を強烈に刻み込む。これがないとひょっとすると人間は、絶滅していたかもしれないのだ。

茂みの中でクマに遭遇したとする。「あら、クマさんこんにちは」などと言って手を振っていると、頭をかじられる。ほうほうの体で、命からがら逃げおおせて「クマって怖いんだ」と認識の誤りを訂正する。テディー・ベアと違って、現実のクマは怖いのだと、脳は強烈にこの失敗を記憶する。このお蔭で次回クマに遭遇したら、一目散に逃げるであろう。

頭をかじられないまでも、例えば私は先日、出勤する駅までの道のりで、濡れたマンホールの上でしたたかに滑った。幸い微量に失禁した程度で済んだが、それは確かに生命を危険に陥れる想定外の出来事であったのだ!その証拠に、帰途でそのマンホールの手前で「あ、危ない!」と気付き立ち止まった。マンホールはすっかり乾いていたにも関わらず、である。

必ずしも失敗とは限らない。私がだいぶ昔にお世話になっていたけち臭い会社で、ある日、なんと全従業員に臨時ボーナスが出た。1万6千円だったと記憶している。おそらく税金対策か何かなのであろうが、私の脳はけち臭いと思っていた当時の会社の、想定外の振る舞いに強烈に修正を余儀なくされた。臨時ボーナスは失敗ではなくうれしい出来事だが、脳からしてみるとやはりこれも「想定外の」出来事なのだ。よって失敗と同様、やはりこれを強く記憶する。

余談になるが、間庭先生は答案を回収して、しかつめらしく採点などして、全員の成績をグラフにして壁に貼ったりなどして、以て無駄に競争心をあおるような、そんな考えの浅いことはしない。出題したら採点して、発表。そこには何らの知性もないではないか。目に見えるものに飛びつくだけしか能がない先生(リーダーと言ってもいい)の下では、育つものも育たぬ。目に見えている現象(ここでは宿題の結果)から、目に見えていない要素を読み取らなくてはならぬ。見えない要素、つまり研修メニューの不備や、当人でさえ気付いていない知識のアラ。言語の壁。そもそもの採用時の基準のズレかもしれぬ。そして、回収したヒントを総動員してwork environmentの改善に努めるのだ。

本質3 ストーリー性

何事にも、ストーリー性が大事だ。乾いたITの技術を、生きた人間のしがらみの中でどう活かすか。利害のぶつかり合いの中で、どうこれを弁証法的に統一して、最終的に合意された設計に落とし込むか。どうしても、お客様の既存の構成の諸事情により、インターナップ側のポリシーを枉げなければならない事もある。いわゆる例外的な構成というやつだ。これらお客様一社一社の開通が、私にとってはドラマなのである。仕事をしていて、感動するだろう?ストーリーをセットで伝えることで、テキストの知識が躍動し出す。教える側が、いかに抽象度(視点)を上げて敷衍して教えられるかが問われるのだ。

先ほどのIPv6のケースでは、なぜIPv6という長いフォーマットのアドレスが考案されたのか。IPv4とフォーマットが全然違うではないか。単にIPv6のフォーマットを教えるだけならば、誰にでもできる。何も私が鼻息を荒げることもない、各自ウェブで調べてもらえばよい。そうではなく、IPv4の歴史的反省点とは何なのか。/25や/28などと、小分けにしなくてはならぬ理由は何か。/24を小分けにするものだから、我々IPアドレス事業者側に逆引きレコードの保守の責任が生じてしまったじゃないか。1.168.192.in-addr.arpa内の254個のレコードのうち、0~127はA社。128~255まではB社、のように複数の会社で分けるものだから、お客様側で1.168.192.in-addr.arpa全体をメンテできないじゃないか。半分は自社のレコードだけれど、残り半分は全然知らない会社のレコードじゃないか。なので、IPアドレス払い出し元の我々が、両社のレコードを代表でメンテしないといけなくなる。逆引きレコードをご希望の際は、こちらで登録しますからご面倒でも随時申請してくださいね。え?自分達で逆引きレコードをメンテしたい?一日に三回も四回も逆引きレコードを書き換えるから?それは困る、書き換え依頼を受けるうちのネットワークオペレーションセンターも大変だ。かといって、うちのネームサーバをお客様に解放して自由に編集させる訳にはいかない。じゃあ「逆引きレコードの権限移譲」でどうだ。従来通りうちのネームサーバでクエリを受けるが、0~127のクエリはA社のネームサーバへ転送。128~255ならB社のネームサーバへ。うちはクエリを転送するだけなので、転送した先のお客様のネームサーバでどんな名前解決をするかは、お任せします。これで解決。

厳格化するIPv4アドレスの新規払い出しに伴うJPNICの審査との関連はどうか。先日JPNICのご担当とご挨拶する機会を得たが、JPNICにもグローバル化の波が押し寄せてきて、なかなかご多忙らしい。IPアドレス払い出しの審査、もうちょっと緩くして欲しいな、などと猫なで声で甘えてみたが、そこは厳として受け入れてもらえなかった。仮想化が主流になってからは、必ずしも使用IPアドレス数と物理機器がイコールではなくなってきた。以前は購入機器の台数でIPアドレス使用数を根拠付けようとしたが、新たな指針が必要となってきた。云々。いくらでも、出てくる。

次回は、私が社内研修で実践している内容をご紹介しよう。

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