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スペシャル対談「インターネットの限界に挑む」

スペシャル対談「インターネットの限界に挑む」

果たしてインターネットは、専用線に劣るのか?まずは、この迷信から考えてみたい。

中村今回のSpecial Talk Sessionのテーマは「インターネットの限界に挑む」です。本日ご参列いただいているプロックスシステムデザインの野村様、川口様はインターネットサーバサービスを主に、システムインテグレーション、サーバシステムの開発・設計を手がけられていらっしゃいますが、現状では、企業の基幹回線にインターネットは難しいのでは?という風潮があります。この点についてはいかがお考えですか。

野村そうですね。なかなか難しい問題ですね。この問題は、お客様の意識次第という側面もありますから。でも私にとっては「インターネットは切れるもの」、これが現実です。とはいえ、その考え方を見つめ直さなくてはならない問題が起きまして。それは、課金制のオンラインのゲームを扱うお客様からハードなクレームがきたことに端を発します。その会社では、1プレー100円の課金制を採用し、勝負に勝つとその100円がプールされるサービスを提供していたのですが、接続が一度切れてしまうとゲームは強制終了となり、課金は戻らない。実際に接続が切れたことで、そのサービスを利用していたユーザからクレームが発生し、では一体、責任所在はどこにあるのかと。ここで直面したのが意識のギャップです。つまり、われわれにとって「接続は切れるもの」。しかし、お客様にとっては「接続していて当たり前」というギャップです。この時、少しパケットが落ちたくらいでは大丈夫という意識を変えなくてはならない必要性を痛感させられました。

川口お客様としてはその課金サービスを、回線が切れる前提で作っていなかったため、実際に切れてしまった時に、莫大な返金処理に対応せざるを得なかったと。 

中村ちょっと待ってください。それはインターネットの問題ではないですよね。

野村ええ。私としてはここで大きな声では言うわけにはいきませんが、「一概にインターネットが問題とは言えない、データが紛失する要因はインターネット以外に設備の整っていない、クライント側のネットワークや機器側に問題があるケースが多い」のが現実。そのことをお客様が想定していなかったことが問題の根源にあると思います。

中村お客様が想定していなかった、さらに現実的に無理なことを100%求めることに問題があると。逆に、お客様の満足度を100%にする方法が別にあるでしょうか?

野村そうですね。専用線にするなどの対処もありますが、仮にそうしたとしても切れる可能性がある点では同じです。特に、専用線はその回線が切れてしまえば全面的にアウトですが、半面、インターネットには迂回するシステムがあるため、より冗長構成が取れているという言い方もできます。

中村一般的に、インターネットが専用回線に比べて安全性、確実性、セキュリティの面で劣っていると言われ、専用回線ではその優位性から高いお金を取るのが当たり前とされています。そのため、企業でインターネットを使うにはまだまだ限界があるととらえられている、この点についてはどうですか?

野村われわれもデータセンタと繋げている回線は専用線ではなく、フレッツのグループアクセスを使用していますし、特に私の中ではそういう意識はありませんね。

中村専用線の品質はよいけれど、コストの面で負担が大きいという現実問題もあり、先ほどのオンラインゲームの話では、ユーザ側の回線の問題やパソコンに問題がある可能性も否定できません。そういう意味では、必ずしもインターネットに問題があるかと言えばそうではないと言えるでしょう。要するに絶対的に専用線が上位にあり、インターネットがかなり低い位置にある現状のままでいいのか……と、疑問に思う部分があるわけです。

インターネットの安定性を確保する、インテリジェント・ルーティングの挑戦。

川口たった一本の回線に頼るのは非常に危険であり、そういう状態であってはいけないでしょう。リスクを排除したいのであれば、コストバランスもあるでしょうが、専用線にもきちんとした冗長化を図っていくことが望ましい在り方だと思います。一概にインターネットが不安定、確実性に欠けるという判断は誤っている、僕はそう思いますよ。

中村その認識のギャップ、現実的な問題にチャレンジしようとしているのが、まさに当社が掲げる部分なのですが、世の中的にインターネットの問題を安易にとらえ、安直な概念として定着してしまっていることは否定できないかな、と。これがジレンマであり、今後も追求すべき点だと考えています。ネット環境の冗長化が当たり前になりつつある中、その点についていかがお考えでしょうか。

野村もともとわれわれのネット環境は、JPIXに繋げたうえにODNなどのプロバイダにも繋げて……といった状況が通常でしたが、結局のところJPIXはpeerを張らないと話にならないわけです。われわれもかなりの数のpeerを持っていて、トラフィック交換もできてはいたのですが、やっぱりフィルタや許容が変われば、それに対応せざるを得ません。実際問題としてこれって煩雑で手間もかかります。要するにJPIXと他回線を繋げることによって、どうしても経路が複雑化してしまう。これをひとつにできたらいいよね……という思いはずっと抱いていましたし、逆にこの点がわれわれにとって長きにわたっての課題でもあったわけです。

  • 川口そう。その煩雑で面倒くさい部分を、インターナップ・ジャパンさんがすべて請け負ってくれたわけです。

    野村ですから、現状のネット環境は、われわれのニーズに非常に有効な手段だと思っています。

中村ありがとうございます。

野村別のキャリアを使って、冗長性を持たせたうえで、別のプロバイダを選択するという手もありますが、インターナップ・ジャパンさんを利用すれば、敢えて別のプロバイダを使う必要もなく、インターナップ・ジャパン側で冗長構成を組んでくれるわけですから、この点はすごいですね。

川口NTT東日本さんからインターナップ・ジャパンさんをご紹介いただいた時に、「あっ、これだ!」とピンと感じた点は、僕らにとってもエンドユーザにとっても、冗長構成が組まれている点は非常にアピール性が高いという部分。さらに、インターネット上の経路をきちんと常時監視してくれていて、常に最適なルートを選択して通信に安定性を保ってくれている。こうしたメリットは当然、お客様にも理解していただきやすい。何より、僕らがデータセンタを移動する際にもお客様にご迷惑をおかけしなくてすみますし、環境変化のご説明をすればほとんどの方が受け入れてくださり、納得してくださいます。これはどういうことかと言うと、お客様にもメリットがあるからです。

中村それは当社にとっても、非常にありがたい話です。

川口これは野村とも話したことですが、NTT東日本さんがインターナップ・ジャパンさんを紹介してくれた時、もしNTTのデータセンタを使わなくても、インターナップ・ジャパンさんのインターネット回線、ぜひ欲しいよねと(笑)。

 サイバーテロに対する挑戦。

中村インターネットのセキュリティの部分では何かご意見がありますでしょうか?

野村ええ。初期のインターネットの時代は、今のようにセキュリティはまったくメジャーではなく、普通にtelnet等のポートが開いていました。要は、セキュリティの意識・対策というものが当時はなかったということ。当たり前のように、名前とパスワードが一緒の常パス状態でしたし、簡単に外部から侵入できてしまう恐ろしい状態でした。例えば、今はユーザ領域にしか行けませんが、当時はWebのCGIを設置する場合も上流までいくことは容易かったですし、要因としてapacheではなくルートで動いていたケースが多かったため、ハイジャックも非常に容易だった。現代の管理者はDaemonのsandbox化等を行い、色々な対策をしているため、ハイジャックは非常に困難になっています。

川口野村としては、Webのトップだけではなく、深いところまで知りたかったんだよね(笑)。

野村また最近の傾向としては、インターネットの安全性を考える上ではDDOSの問題も避けて通れない。われわれのようにサーバをたくさん持っていれば、宿命として攻撃も食らいます。どこまで対応できるは別として、攻撃を食らった時に把握できる付随機能があればうれしいですよね。

中村過去に攻撃されたこともあるということですね? というより、野村さんはもともと攻撃に対しては高いスキルを持っていた?(笑)。

野村いえいえ、そんなことはないのですが、攻撃側(送信元)もだいたい1時間ないし2時間ほどで音を上げ、放っておけば自然と止まるケースが多かったのですが、それが長時間に及ぶと、当然ながらトラフィックも増えてきます。そうなるとわれわれとしては、その都度しかるべきところにフィルタリングをお願いすることになります。こうした場合に自動的に止まれば、それはとても望ましいカタチですね。

中村自動的に検知して、ルータ設定を替えるというソフトも市販されていますね。

野村結局、止めてほしい時に止められればまったく問題はないのですが、そこがわれわれのような仕事では、なかなか難しい問題になっています。

中村当社でも日々このような脅威には屈しまいと挑戦を続けています。

野村まあ、ムダにルータの負担を上げるわけにもいきませんし、ここは難しい問題ですね。

上位レベルの管理体制を築く。

中村インターネットが一部に劣ったものであるととらえられている問題の根本に、“責任の概念”がないからではないかと一部に言われています。そのため、企業の大事な部分やホスティングに、インターネットの使用頻度が低い状況にありますが、その点はどうでしょうか?

野村ソリューションの時に責任所在は明確にされるべきですが、いざ問題が起きた時、誰がどこで管理しているかが分からない現状はマイナス面として存在しますね。

川口一方のサーバから出したパケットが他方のサーバに確実に届くことは誰も保証していませんよね。でも、ユーザは保証されているものと信じている。例えば、メールを出したら相手に確実に届くと何の疑問も抱いていない。そうした人は非常に多いですよね。そうした弱点をあえて公にして、迷信を覆す取り組みが必要でしょう。

中村一般的に○○な問題があるけれど、うちの企業ではそれを克服するために○○の取り組みをしているとアピールするということですね。

川口そうです。そうした取り組みがあって初めて、より安全に、より快適に使うことができる。

中村当社やNTTさんはきちんとメンテナンスをしますが、そうでない業者が非常に多いのも事実です。今の世の中では責任が分散化していて、全体的に責任が薄まっている傾向にあり、ある一部分に責任が所在すべきだという概念は30年前のものではないかと考える向きもありますが。

野村誰が管理しているか不安だという思いは、あくまで単なる不安であり、現実的には何の意味もないでしょう。さらに、ネットワークのレベルが低いという問題も別個のものだと思います。周囲を見渡してみると、レベルが上位のネット業者でなければ安心できない人が多い割に、ピンキリのインターネット業者は多く、キリの業者を使っている人も多い。このギャップが問題を深刻化させている。

中村われわれのようなインターネット事業者は、ついついそうした現実から卑屈になる部分もあります。いえ、当社は別ですよ(笑)。そうした問題に対しての取り組みも行っていますし、専用線にすでに追いついているという自信がありますので。

インターネットを使う新たな文化の創出。

中村2000年以前を振り返りますと、日本のネット環境もダイヤル接続が多く、世帯普及率が低かったのですが、この10年であっという間にアメリカを追い抜いてしまいました。でも、まだまだ現状に不満足という声も多く聞かれますが。

野村それもインターネットに限界があるか?という意味と同じで、例えばアメリカであればホスティング = Amazonというくらいメジャーです。これに対して日本では、クラウドコンピューティングでインターネットに出すなんて、とんでもないと思っている企業が多いことも今の日本の実情でしょう。

川口日本がクラウドに大事なデータを預けない。その背景には、サーバのメンテナンス業者を切れないしがらみなど、日本社会の古い体質が邪魔をしていて、思い切ったことができない状況があることも要因として挙げられるでしょう。そんな中、インターネットネイテイブと呼ばれる、もの心ついた時からインターネットに慣れ親しんでいる子どもたちが成長するに従って、中学生レベルでプログラミングを手がけ、高校生レベルで起業する人が、われわれの想像を越えるペースで世に出てきています。そうした人たちが成長するに従って、インターネットの使い方も激変するでしょうね。ですから、あと5年ないし10年のうちに、日本でもインターネットが爆発的に利用されることになるのではないかと個人的に思う部分はあります。

中村先進国だけを見ても国家によってネットの環境はさまざまな状態にあり、インフラの違いは大きいですね。要するに、インターネットを阻み、限界を生じさせているのは技術だけの問題ではなく、国や国民の意識、文化、ネットインフラ等に要因があるのではないかと。特に日本人の場合は、国民気質としてセキュリティなどに対して非常に神経質である点は否めないですね。

川口それは一理ありますね。神経質である割にお金は使いたがらない(笑)。

中村さらに、よく理解できていないから専用線に高いお金を使ってしまう(笑)。これでは合理的とはいえません。その打開策として、われわれの会社が社会に対して影響力を持てるようテクノロジーを向上し、社会的認知度を上げることが必要になります。それはプロックスシステムデザインさんも同じですよね。

  • 野村テクノロジーはもちろんですが、会社としてのカルチャーを体現できる人材の育成も大事になってきますね。

    川口社会的認知度を上げる、他社との差別化を図る、こうした取り組みにはさまざまな施策があると思いますが、実はわが社の最も苦手とする部分なんです(笑)。
    もともと当社には口コミでのお客様が多いため、2011年からは企業アピールの戦略などに本格的に取り組まなければならないと思っています。ここまで成長したインターネット社会の中で、曲がりなりにもネットの仕事にかかわっている以上、ネットを活用した情報発信をしないというのもおかしな話ですから。今後はネットを活用して、インターネットの限界はもちろんのこと、インターネットが抱える問題を主体的になって払拭していかなくてはなりませんね。

~結論~技術革新に加えて、ユーザ視点の工夫、挑戦、創造性があれば、インターネットの限界は超えられる!!

野村身をもって感じる部分は、業界を含めお客様自体の変化です。全体のパイとしては何の知識も持たない普通の人がインターネットを使うようになり、裾野はどんどん広がっている中、「古くからいた技術者が辞めてしまった」という話も関連業者からよく耳にします。言葉は悪くなりますが、業者側のレベルが落ちてきていることも否定できません。つまり、裾野の広がりに対して専門技術者が少なくなってきている。われわれは10年以上にわたって専用サーバというジャンルの商品を提供し、4000台以上の専用サーバを運用していますが、われわれのテクノロジーは専門技術があって、やっと使えるという難しさで成り立っています。そのため、お客様の手に余るサービスになっている部分に対して、どこまでサポートしてあげればいいかを、われわれは具体的に落とし込んでいかなくはならないでしょうし、さらに、送り手と受け手の距離を縮めるために何をすべきか、という問題もクリアしていかなければならないと思っています。これも2011年の課題でしょうね。

川口端的に言えば、技術者がいなくても使えるサービスを提供する。この取り組みは、ぜひやらなくてはならない部分でしょうね。

野村そう。それにサーバの設定、ルータの設定の際に使う専門用語の問題もあります。「○○のドメインを取得しました。HPに公開します」と言っても、実際にどのように公開すればいいのか、一般の人には分かりません。その部分をどれだけシンプルにできるか、誰が代わりにやってくれるのか、ということ。ただし、前提としてサーバ自体の限界はありません。技術的に熟成されていますし、どんなことでも可能な状態にあります。そういう意味では、アメリカの大手オンラインストアの中でも、前面にプラットホームをドンと出しているケースがありますが、何のサポートもしていないところも多い。この状態は、日本のお客さんは受け入れられないこともきちんと踏まえなくてはならないでしょう。

中村アメリカなどでは、「取説、マニュアルがなくても使ってね、使えるでしょ?」が前提になっていて、彼らにとってそこが限界への挑戦なのかもしれません。日本の製品は微に入り細に入り説明して、もしもの場合まで懇切丁寧に説明するのが通常になってしまっていますから。

川口技術を広めて、全体の底上げをすることは日本にとっては現実的ではありません。その違いはきちんと認識して、底上げしないといけませんね。振り返ると、僕らは昔、呪文のようなコマンドを打ち込んでサーバの設定をしてきましたが、そのサーバを使う側の技術者が技術面で分からず、弊社のサポートに電話をしてきて「○○をやるにはどうしたらいい?」という質問を受けたりもしました。そうした質問に対して親身にサポートするのが弊社の強みでもあるのですが、お客様のスキルが目に見えて上がり、弊社のサーバを5年も使っていれば、一端のネットワークエンジニアやLinuxエンジニアになれるほど、技術面での信頼関係が築かれています。でもそうしたやり方も、今では方向性が違ってきてしまっている、それは否定できませんね。

野村技術者そのものの質量が下がり、いまやサーバ管理は総務の一担当者がやっているというケースも珍しくなくなっています。

  • 川口初心者でも簡単に使えるコントロールパネルを作るなど、グラフィカルユーザインターフェースの観点が重要になってきますし、業者が作業を代行してあげる体制構築も必要になってくるでしょう。そういった方向にシフトしていることは間違いありません。

    野村われわれが限界を越えようとしているのは、技術者がいなければ使えなかったことを、一般の人が容易に使えるようにするということですね。

川口容れ物は同じですが、容れ物を囲っている装飾品や、お手伝いする部隊の充実を図る。ここからスタートですね。

中村その点、われわれのお客様はビギナーや個人の方ではないので、そうした点での違いはありますが、プロックスシステムデザインさん同様、それほどスキルのない方でも使えるインターネットサービスをご提供することに、インターナップ・ジャパンとしても積極的に取り組んでいきたいと思っています。併せて、より広範囲の方が容易にインターネットサービスを利用できる環境づくりのため、われわれは今以上にサポート内容と体制を充実させ、より快適に、より充実したネット環境のご提供に努めたいと考えています。

川口当たり前のことを提供していても、他社に埋もれてしまいます。数多ある業者の中で存在感を打ち出していかない限り企業は生き残っていけません。そこで注目すべきは、顧客のニーズを的確につかんで、それをきちんと提供してあげること。こうした地道な取り組みによって、インターネットの限界を俯瞰できるとは思うのですが。

中村結論として、独りよがりに迷信化したインターネット限界はないということですね。根拠なくその限界に挑むのではなく、技術者減少、インターネット利用者の裾野の広がりを見すえ、インテリジェント・ルーティングの先にある優れたサービスを今以上に作っていかなければならないと思っています。つまり、インターネットの弱点を克服するためのたゆまぬ挑戦こそが、われわれに課せられた命題。その命題を常に念頭に置き、着実に前に突き進んでくことによって、自ずとインターネットの限界はなくなるということだと思います。 本日はお忙しい中、ありがとうございました。

  • プロックスシステムデザイン株式会社
  • プロックスシステムデザイン株式会社様
  • 本社所在地:〒101-0021東京都千代田区外神田5丁目2-3 JR外神田ビル
  • 設立:1997年(平成9)年7月28日
  • 事業内容:
    インターネットサーバサービス
    コロケーションサービス
    システムインテグレーション
    サーバシステムの開発・設計
  • URL:http://www.prox.ad.jp/

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