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CEOニュースレター

ストレス耐性

2012年2月

ある人から「君の仕事にはストレス耐性が必要だね」と言われました。日頃あまり意識したことがないポイントだったので、早速ネット上でいくつかストレス耐性診断というのをやってみました。すると確かにどの診断でも、「あなたのストレス耐性は極めて高い」という結果になりました。
 しかし、これらの診断にはどうもちょっと腑に落ちないところがあります。チェックリストの質問内容から見ると、これらの診断は「ストレス耐性」を測るというよりは、むしろ現在の「ストレス度合」を測っているように感じられるのです。質問例を挙げると、例えば「支出に見合った収入がある」あるいは「心身ともに健康である」といったものです。これらの質問について回答がYESなら、勿論その分ストレスは少ないでしょう。しかし、ストレス耐性を測るのであれば、質問はむしろ、「収入を超える支出をしばしばしても、なんとかなると思う」や「心身ともに不健康でも、結局自分は長生きすると思う」になるべきではないかと感じたわけです。

あらためて、自分のストレス耐性が高いのかと考えると、実はあまり高くない気がします。とにかく、ここ一番ストレスのかかる場面では成果が出ません。ピアノ発表会では、本番になると練習で出来ていることの半分もできません。麻雀でも、大きな場になればなるほど、行くか行かないかの判断は殆ど裏目に出て、勝ったためしがない。今流行っているところの「持っていない男」の代表みたいなものです。
 年齢を重ねるとともにそういうことを嫌というほど実感させられるので、最近はもう、ゴルフの石川遼やマニー・パックマン・パッキャオがハイパー・ストレスのかかる状況に挑むのを見るだけで、自分のことのように碌なことにならないのではないかと指先が冷たくなってしまい、昔のように楽しんで見るどころではありません。でも、「持っている男」というのは信じられないことにハイパー・ストレスを跳ね返し、ミラクルを起こします。私は、こういう人達のことをストレス耐性が強いというのだろうと思ってきました。  

一方、私はこれまで、仕事上のストレスが原因で心身のバランスを崩し、異常な言動を取るようになった人物を何人も見てきましたが、現状、私はそういう状況には至っていません。ただ、私から見ると異常な言動をとっている人達が、むしろ私こそが異様な言動をとっているのだと考えている節があるようにも時々感じられるので、まあ、あまり自信を持って言い切れるものでもないのかも知れませんが。ただそういう人達は私を、「最低の人間だ」とか「最悪の経営者だ」とは言っても、「あんた病気だよ」とは言わないので、やっぱり私の心身はバランスしているのだと思います。
 私が心身のバランスを今のところ保っている理由は、おそらく、私のストレス耐性が高いからではありません。その観点から自分の生活を見直してみると、ふと、なるべく余計なストレスを回避しようとしている自分がいることに気づかされます。

ただ最近、ストレスの原因は頑張ることだから、頑張らない人生なるものを提唱している人もいますが、現実はそうはいきません。何かを得たければ、それはもう頑張るしかないし、そこでストレスがかかるのは仕方がないのです。生きがいとお金が欲しいから仕事は頑張ります。生きがいと温もりが欲しいから家庭も頑張ります。でもそれはあくまでも、そうした目的のために頑張るだけです。仕事も家庭も、例えば見栄や外聞のためには頑張らないわけです。
 そして、仕事と家庭外のこと、これはもう殆ど頑張らない。特に頑張らないのが人間関係です。誤解のないように書いておきますが、悪徳非道の限りをつくし、人間同士の信頼などどうでもよいという意味ではありません。むしろ逆です。共通の目標に向かって協働できる人の間の信頼関係ほど、仕事にも家庭にも重要なものはないわけで、そこの維持のためなら、それはもう頑張ります。

しかし自分を見直した時に、皆から良い人と思われること、皆から好かれることには極力頑張らないように努めている自分に気づかされます。これは、信頼されたい人に信頼されるようには努力しても、誰かに好かれたいから自分を変えるという発想はしないように努めるということです。
 頑張らないように努める、という表現が矛盾していることは自分でも認識しています。ただ、この良い人と思われたいと思わないことに「努める」ことをストレスを少なくしてできる人と、「努めて」もストレスに負けて結局「頑張ってしまう」人の差が、もっと大事なところにストレス余力を残しておける人と、残しておけない人の大きな差となって表れてくるような気はしてきました。
 普通に生活や仕事をしていく上で必要なストレス耐性は、持っている人が試されるハイパー・ストレス耐性とは異なり、要するに現状でストレス余力がどれくらい残っているかということであり、今かかえているストレスの量が少ないほどストレス耐性が高いという冒頭の診断アプローチで、あながち間違ってはいないのかもしれません。

代表執行役CEO  奥野 政樹

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